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  • 執筆者の写真tsumugi

紡だより Vol.5 “易きに流されるなかれ“

更新日:2018年8月27日




 茶の地に、金とも黄とも言えぬ色の大きな渦巻き模様。裏地は朱色という斬新なデザインは、大正3年生まれの祖母から受け継いだ着物です。たぶん銘仙でしょうか。さすがにところどころ小さな穴やほつれはありますが、普段着というか作業着というか、店で着るのに支障はありません。私の記憶にある祖母は、冠婚葬祭以外は既に洋服でした。彼女が袖を通していたのはいつ頃のことなのでしょう。昔の物がいかにきちんと丁寧に、丈夫に作られているかということを痛感します。  約20年前に亡くなった祖母の普段着物の多くは、着物から洋服などへのリフォームを手掛ける母の友人に引き取ってもらっていました。私が、ふとしたことから着物の魅力を知り、店で着始めたのを知ったその方が、まだほどいていない着物を送ってくれたのです。届いた品は冒頭の物以外も、洋服とは趣が異なり、何とも言えない“ハイカラ”な感じ。紫の地にグレーの模様が縦縞に入った着物の裏は、袖口や裾がエメラルドグリーン!私には想像もつかないような色の組み合わせが、当時の女性たちのお洒落心を伺わせます。  一方で着物は、洋服に比べると気が遠くなるくらい手間が要ります。私は当初、丈を合わせ、隠すものを隠し、帯をまくまで、1時間近くかかりました。今でこそ10分ほどで着られますが洋服の比ではありません。手入れに到っては、想像を絶します。私は普段、陰干しするだけで、クリーニングに出すのは一張羅と夏物だけですが、昔の人は「洗い張り」といって着物を解いて、洗って糊付けして、また仕立てて…ということを自分でしていたとか。手をかけて大事に大事に着ていたのでしょう。  ファストファッションやファストフード、冷凍食品、メール、100円均一店は確かに便利です。でも、手軽に買ったり扱ったりできるがゆえに、粗末に扱いがちになっている自分に気づくこともしばしばあります。私にとって着物は、「易きに流れないように」と戒めてくれるアイテムの一つでもあるのです。(2015.10.28)

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