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  • 執筆者の写真tsumugi

紡だより Vol.7 心をかけた贅沢な時間

更新日:2018年8月27日


















 気がつくと、玄関先に置いてあった観葉植物は凍みて茶褐色に変わっていました。犯人は、氷点下5度という最低気温の要因となった数十年に一度の寒波。まるで手を広げたような形の薄緑の葉っぱたちは、夏も冬も10年以上もの間、何気なく空間に安らぎを醸し出してくれていたのに。共犯者は、自分ばかりが「寒い寒い」とぼやいて、軒先で家人やお客さんを迎えてくれていた植物をすっかり忘れていた私でしょう。生き物は素直です。手をかけ、心をかけなかったことを見透かされたような気持ちになりました。  一方で、心をつくしたもてなしに温もりを頂くことがありました。  根っからの貧乏性に加え、ローンを抱えた今、重症のケチケチ病の私。厚着して暖房費を節約するのはもちろん、スーパーの値引き商品で夕飯のメニューが決まるのも常日頃。子供たちの洋服も友人の子供のおさがりかリサイクルショップで購入、お出かけの際はたいてい弁当持ち――という日々ですが、どうにもこうにも伸びきった髪の毛に我慢がならなくなりました。自分でカットなどという器用なことはできず、「10分1000円」という格安カット店に行く勇気もなく、「痛い出費だなあ」と思いつつ、馴染みの美容院に行きました。  何の気兼ねもなく美容院で時間を過ごすのは随分久しぶりでした。出産後は、大阪の実家に帰省した時に両親に子供を預けてカットしていましたが、ぐずってないか、泣いてないか時間ばかり気になっていたものです。元気よく幼稚園に送り出した今、誰も何も気にすることはありません。約5年ぶりに足を運んだにも関わらず、担当の美容師さんはよく覚えていてくれました。  思い出話やお互いの子育ての話をしながら、丁寧に髪をほぐし、シャンプーしてもらう。目をつぶってマッサージしてもらっていると忘れていた贅沢な時間の使い方を思い出させてくれるようでした。誰とでも話をするのは苦手な質ですが、パワフルで優しい彼女の手つきと会話は身体全体をほぐしてくれました。技術と心を尽くしたもてなしは、料金以上のもの。形は変われども、紡でもそんな時間をお客さんに提供できたらなと、改めて感じることができた休日のひとときでした。(2016.2.3)

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